はじめに:「アクセスはあるのに問い合わせが来ない」問題を解決する
Webサイトからの集客は、独立後の一人社長にとって最も重要なマーケティングチャネルの一つです。しかし、多くの方が「アクセスはある程度あるのに、問い合わせが全然来ない」という悩みを抱えています。
この問題の原因は、ほぼ必ずサイト上のどこかにあります。そしてその「どこか」を特定するのが、GA4(Google Analytics 4)という無料ツールです。
GA4を使えば、「何人がサイトを訪れたか」だけでなく、「どのページで迷ったか」「どこで帰ったか」「どういう経路で問い合わせに至ったか」まで把握できます。この記事では、ITリテラシーが高くない方でも実践できる5つの分析手法を、具体的な操作手順とともに解説します。
CVRとは何か(まず用語を理解する)
CVR(コンバージョン率)とは、サイトを訪れた人のうち「問い合わせ」や「資料請求」などの目標行動をとった人の割合のことです。
CVR(%)= コンバージョン数 ÷ セッション数 × 100
たとえば、月間500セッションで5件の問い合わせがあれば、CVRは1%です。一般的なBtoB企業サイトのCVRの目安は1〜3%と言われており、まずは「現状のCVRを把握する」ことが出発点になります。
CVRを上げる方法は大きく2つです。「訪問者を増やす(集客)」か「既存の訪問者をより多く問い合わせに転換する(CVR改善)」です。集客には広告費や時間がかかりますが、CVR改善は今あるアクセスを活かす方法なので、費用対効果が高く、まず優先すべき取り組みです。
なぜGA4でCVR改善ができるのか
GA4は、Googleが提供する無料のウェブ解析ツールです。サイトに一行のコードを設置するだけで、訪問者の行動データを自動で収集・記録してくれます。
GA4が分かること
GA4では以下のことが把握できます。
- サイトへの訪問者数と、その推移
- 訪問者がどのページを閲覧し、どのページで離脱したか
- スマートフォンとPCの利用比率
- Google検索・SNS・直接入力など、どこから来たか
- 問い合わせフォームに到達したが送信しなかった人がどれくらいいるか
これらのデータを組み合わせることで、「なぜ問い合わせが来ないのか」の仮説を立て、改善のアクションに繋げることができます。
GA4と旧Universal Analytics(UA)の違い
2023年7月に旧バージョンのGoogle Analytics(UA)が終了し、GA4へ移行しました。GA4はUAと画面構成が大きく異なるため、「使い方が分からない」と感じる方が多いです。しかし基本的な考え方は同じで、「ユーザーの行動を数値で把握する」という目的は変わりません。
本記事ではGA4の画面を前提に解説します。
5つの分析手法
分析手法1:コンバージョンレポートで「成果の全体像」を把握する
最初に確認すべきは、そもそも問い合わせが「計測されているか」です。GA4ではコンバージョン(問い合わせ送信など)を「イベント」として設定します。
確認手順:
- GA4の左メニューから「レポート」をクリックします
- 「ライフサイクル」→「エンゲージメント」→「コンバージョン」を選択します
- 表示される一覧の中に、問い合わせフォームの送信完了に対応するイベント名があるか確認します
よくあるイベント名の例:generate_lead、contact_form_submit、page_view(/thanks)
コンバージョンが計測されていない場合は、まず設定が必要です。Googleタグマネージャーを使う方法が一般的ですが、WordPressであればプラグイン「Contact Form 7」と「GA4連携プラグイン」で設定できます。
このレポートで確認すること:
- 月間コンバージョン数の実績
- 前月比・前年同月比でのトレンド
- コンバージョンの多い曜日・時間帯(どの時間に問い合わせが多いかが分かる)
まずこの数値を「ベースライン」として記録しておくことが、改善の出発点です。
分析手法2:ユーザー行動レポートで「サイト内の動き」を追う
コンバージョン数が分かったら、次に「どのページを経由して問い合わせに至ったか」を調べます。
確認手順:
- 左メニュー「レポート」→「ライフサイクル」→「エンゲージメント」→「ページとスクリーン」を選択します
- 「ページタイトル」または「ページのパスとスクリーンクラス」の列を確認します
- 各ページの「コンバージョン」列の数値を確認します
このレポートで確認すること:
- どのページが最も多くコンバージョンに貢献しているか
- 閲覧数が多いのにコンバージョンに繋がっていないページがないか
- 平均エンゲージメント時間が短いページ(=読まれずに離脱されているページ)はどれか
たとえば「サービス紹介ページ」の閲覧数が多いのにコンバージョン数が極端に少ない場合、そのページに問い合わせへの動線(CTAボタンや問い合わせリンク)が不足しているか、コンテンツが不十分な可能性があります。
改善アクションの例:
- コンバージョンに繋がっていないページに「まずは無料相談はこちら」などのCTAボタンを追加する
- エンゲージメント時間が短いページのコンテンツを充実させる
- コンバージョンの多いページのデザインや構成を他のページにも横展開する
分析手法3:ランディングページレポートで「入口の質」を評価する
「ランディングページ(LP)」とは、訪問者がサイトに最初に到達したページのことです。このページの質が低ければ、すぐに離脱されてしまいます。
確認手順:
- 左メニュー「レポート」→「ライフサイクル」→「集客」→「ランディングページ」を選択します
- 各ページの「セッション数」「エンゲージメント率」「コンバージョン」を確認します
エンゲージメント率とは:
エンゲージメント率とは、「10秒以上サイトに滞在した」「2ページ以上閲覧した」「コンバージョンが発生した」のいずれかに該当したセッションの割合です。旧UAの「直帰率」に相当しますが、より精度の高い指標です。エンゲージメント率が低い(50%未満など)ページは、訪問者の期待と実際のコンテンツにギャップがある可能性があります。
このレポートで確認すること:
- セッション数が多いランディングページのエンゲージメント率
- エンゲージメント率が低いのに流入が多いページ(改善優先度が高い)
- Google検索経由でどのページに最初に到達しているか
改善アクションの例:
- エンゲージメント率の低いページのファーストビュー(最初に見える部分)を見直す
- ページのタイトルや説明文と実際のコンテンツの整合性を確認する
- ページの読み込み速度を改善する(PageSpeed Insightsで無料チェック可能)
分析手法4:デバイス別レポートで「スマホ体験」を改善する
一人社長向けBtoB(士業・コンサル・制作業)のサイトでも、スマートフォンからの閲覧比率は年々高まっています。スマホでの表示が崩れていたり、フォームが入力しにくかったりすると、それだけでCVRが下がります。
確認手順:
- 左メニュー「レポート」→「ユーザー属性」→「テクノロジー」→「ユーザーの環境の詳細」を選択します
- 「デバイスカテゴリ」の列を確認します(desktop / mobile / tablet)
- デバイス別のコンバージョン率を比較します
このレポートで確認すること:
- スマートフォンとPCでコンバージョン率に大きな差がないか
- モバイルのエンゲージメント率がPCに比べて著しく低くないか
- スマホ流入の比率(多くの場合50%を超える)
よくある問題と改善策:
| 問題 | 改善策 |
|------|--------|
| スマホでボタンが小さくて押せない | CTAボタンのサイズを48px以上に設定する |
| スマホで横スクロールが発生する | レスポンシブデザインのCSSを修正する |
| スマホでフォームの入力欄が小さい | 入力欄のfont-sizeを16px以上にする |
| 電話番号がタップで発信できない | <a href="tel:xxx"> を使ったタップ電話リンクに変更する |
モバイルのCVRがPCの半分以下であれば、スマホ対応の改善が最優先です。
分析手法5:流入経路別レポートで「効いているチャネル」を特定する
問い合わせが来る人は、どこからサイトに訪れているのかを把握することで、今後の集客施策の優先順位が明確になります。
確認手順:
- 左メニュー「レポート」→「ライフサイクル」→「集客」→「トラフィック獲得」を選択します
- 「セッションのデフォルト チャネル グループ」の列を確認します
- チャネル別のセッション数、エンゲージメント率、コンバージョン数を比較します
主なチャネルの意味:
| チャネル名 | 意味 | |-----------|------| | Organic Search | Google・Yahoo!などの検索エンジン経由 | | Direct | URLを直接入力、またはブックマーク | | Referral | 他サイトからのリンク経由 | | Organic Social | SNS(X、Instagram等)からの流入 | | Email | メルマガ等のメール経由 |
このレポートで確認すること:
- コンバージョンが最も多いチャネルはどこか
- セッション数が多いのにコンバージョンが少ないチャネルはないか
- 検索経由の流入があるか(SEOの効果確認)
改善アクションの例:
- コンバージョンの多いチャネルへの投資を増やす
- SNSからの流入がゼロであれば、プロフィールにサイトリンクを追加する
- 検索経由の流入が少なければ、SEO施策(記事作成・キーワード最適化)を検討する
各レポートを組み合わせた改善の考え方
5つのレポートはそれぞれ単独でも使えますが、組み合わせることでより強力な洞察が得られます。
改善の仮説立案フロー
コンバージョンレポート → 月間成果を把握
↓
流入経路別レポート → どこから来ているか確認
↓
ランディングページレポート → 入口ページの品質確認
↓
ユーザー行動レポート → サイト内の動きを追跡
↓
デバイス別レポート → スマホ/PCの差を確認
この順序でデータを見ると、「どこに問題があるか」の仮説が自然と浮かび上がってきます。
具体的な改善アクションの例
ケース1:「Google検索からの流入は多いが問い合わせが少ない」
- ランディングページのエンゲージメント率を確認 → 低ければコンテンツ改善
- デバイス別でモバイルのCVRが低ければスマホ対応を優先
- CTAボタンの文言を「お問い合わせ」から「3分で分かる無料相談はこちら」に変更
ケース2:「スマホからのアクセスが60%だが問い合わせはすべてPCから」
- スマホでのフォーム表示を実際に確認する
- 電話問い合わせの導線をスマホ向けに追加する
- スマホのファーストビューに明確なCTAを配置する
ケース3:「SNS経由の流入があるが離脱率が高い」
- SNSのプロフィールやリンク先のURLが正しいか確認する
- ランディングページがSNSでの発信内容と一致しているか確認する
- ページの読み込み速度をモバイル環境で確認する
【実践】今週やること3ステップ
理論だけ理解しても、行動しなければ意味がありません。以下の3ステップを今週中に実践してみてください。
ステップ1:今月のCVRを計算する(15分)
- GA4にログインし、左メニュー「レポート」→「コンバージョン」を確認します
- 今月のコンバージョン数を記録します
- 同期間の「セッション数」をレポートから確認します
- CVR = コンバージョン数 ÷ セッション数 × 100 を計算します
この数値がベースラインです。今後の改善施策の効果を測るための基準になります。
ステップ2:ランディングページTOP3のエンゲージメント率を確認する(20分)
- 「集客」→「ランディングページ」レポートを開きます
- セッション数の多い上位3ページのエンゲージメント率を確認します
- エンゲージメント率が60%未満のページをリストアップします
- そのページをスマートフォンで実際に開いて確認します(第三者の目で見る)
「なんとなく使いにくい」「CTAが見つからない」「内容が分かりにくい」など、直感的に感じたことをメモするだけでOKです。
ステップ3:CTAボタンを1つ改善する(30分)
ステップ2で見つけた問題ページのCTAボタンを1つ変更します。
変更のヒント:
- 「お問い合わせ」→「まずは無料相談(3分で完了)」
- 「詳しくはこちら」→「サービス内容を確認する」
- ボタンの色をページ内で最も目立つ色に変更する
- ページ内でCTAが1か所しかない場合、ページ中盤にも追加する
この3ステップを実践した後、2〜4週間後に再度CVRを確認してみてください。小さな変更でも、CVRが0.5〜1%改善するだけで、月の問い合わせ件数が倍増することもあります。
まとめ:データを見る習慣が問い合わせを増やす
GA4は無料で使える強力な分析ツールですが、設定しただけで放置してしまっている方が大半です。月に一度、30分でもデータを確認する習慣をつけるだけで、Webサイトの改善スピードは大きく変わります。
まずはこの記事で紹介した5つのレポートのうち、「コンバージョンレポート」と「ランディングページレポート」の2つだけを毎月確認することから始めてみてください。
データは「現状を映す鏡」です。鏡を見なければ、どこを直せばいいかは永遠に分かりません。