先月、クライアントとの1時間のZoom打ち合わせが終わった直後、「あれ、さっきの納期って何日だっけ」と思った。メモは取っていたが、話が盛り上がった後半は走り書きで、自分でも読めない箇所がある。結局、録画を見返して議事録を作るのに40分かかった。

こんなことを毎週やっていたら、それだけで月に3時間以上を失っている。そこで、AI議事録ツールを4つ試してみた。結論から言うと、「完全に任せる」のは無理だが、「下書きを作ってもらう」なら十分に実用レベルだった。

AI議事録ツールとは何か

AI議事録ツールは、ZoomやGoogle Meetなどの会議に自動で参加し、録音・文字起こし・要約までをワンストップで処理するサービスだ。従来の文字起こしサービスとの違いは、単にテキスト化するだけでなく、「決定事項」「タスク」「次回のアクション」まで抽出してくれる点にある。

2026年現在、音声認識の精度は大幅に向上しており、静かな環境であれば日本語でも95%以上の認識率を出せるツールが複数ある。「文字起こし」から「解釈」の段階に入ったと言っていい。

4つのツールを比較する

今回試したのは、tl;dv、Otter、Notta、CLOVA Noteの4つ。それぞれ強みが異なるため、用途に合わせて選ぶ必要がある。

基本スペック比較

項目 tl;dv Otter Notta CLOVA Note
主な用途 Web会議の自動記録 英語会議の記録 日本語の文字起こし 対面の録音
Zoom連携 対応 対応 対応 非対応
Google Meet連携 対応 対応 対応 非対応
Teams連携 対応 対応 対応 非対応
日本語精度 良好 限定的 高い(98%以上) 高い
無料プラン あり(録画無制限) あり(制限付き) あり(時間制限) あり
AI要約 対応 対応 対応(Notta Brain) 限定的

tl;dv — Web会議メインならこれ

tl;dvの最大の特徴は、会議に自動で「参加」してくれることだ。ZoomやGoogle Meetの予定がカレンダーにあれば、ボットが自動的に会議に入り、録画・文字起こし・要約を勝手にやってくれる。自分はツールの操作を一切気にせず、会議に集中できる。

無料プランでも録画と文字起こしは無制限で使える(ただし録画データは3ヶ月で削除される)。AI要約は無料だと10回の制限がある。有料のProプランは月額$18(年払い)から。

CRMとの連携機能が充実しているため、営業系の打ち合わせが多い人には特にメリットが大きい。

Otter — 英語の会議が多いなら

Otterは英語圏で圧倒的なシェアを持つツールだ。英語の認識精度は非常に高く、リアルタイムでAIに「今の議論を要約して」と質問できる機能もある。

ただし、日本語の対応は限定的で、日本語の会議メインで使うには向いていない。英語のクライアントとのミーティングや、海外のウェビナーの内容を把握したいときに選ぶツールだ。

Notta — 日本語の精度を重視するなら

Nottaは日本語の文字起こし精度が98.86%と公称されており、実際に使ってみても認識精度は高い。UIも直感的で、Web会議だけでなく録音済みのファイルをアップロードして文字起こしすることもできる。

AIエージェント機能「Notta Brain」では、音声データと資料を統合した解析、要約、パワーポイント形式での資料作成にまで対応している。58言語に対応しているため、多言語の会議がある場合にも使いやすい。

フリープランは時間に制限があるが、基本的な文字起こしは試せる。プレミアムプランは個人向け、ビジネスプランはチーム向け。年払いの方が割安になる。

CLOVA Note — 対面の打ち合わせに

CLOVA NoteはLINEが提供するサービスで、対面での打ち合わせやインタビューの録音に向いている。スマートフォンのアプリで録音して、そのまま文字起こしができる。操作がシンプルで、特別な設定なしにすぐ使えるのが利点だ。

Web会議ツールとの直接連携はないため、ZoomやGoogle Meetでの利用には向いていない。「カフェでクライアントと話した内容をメモしたい」「現場の打ち合わせを記録したい」といった、対面シーンで力を発揮する。

利用シーン別の選び方

あなたの状況 おすすめツール 理由
Zoom会議が週3回以上 tl;dv 自動参加・無料の録画無制限
英語のクライアントが多い Otter 英語認識精度が最も高い
日本語の精度を最優先 Notta 日本語98%以上、UIも使いやすい
対面の打ち合わせが中心 CLOVA Note スマホで手軽に録音・文字起こし
まず無料で試したい tl;dv or CLOVA Note 無料枠が充実

Zoom・Google Meetとの連携手順

AI議事録ツールを使う最初のハードルは「連携の設定」だ。ここではtl;dvとNottaの手順を例にする。

tl;dvの場合

  1. tl;dv公式サイトでアカウントを作成する
  2. Google CalendarまたはOutlookカレンダーを連携する
  3. 会議の設定でtl;dvのボットが参加できるよう許可する
  4. 次の会議から、自動的にボットが参加して録画・文字起こしが開始される

設定にかかる時間は5分程度。一度設定すれば、あとは毎回の操作は不要だ。

Nottaの場合

  1. Notta公式サイトまたはアプリでアカウントを作成する
  2. 「Web会議の文字起こし」メニューからZoomまたはGoogle Meetを選択する
  3. 会議URLを入力するか、カレンダー連携で自動検出させる
  4. 録音開始ボタンを押すと、リアルタイムで文字起こしが始まる

Nottaの場合、手動で録音開始する方式のため、会議前に忘れずに操作する必要がある。その代わり、録音したくない会議はスキップできるという利点もある。

議事録からタスクを自動抽出する

AI議事録ツールの真価は、文字起こしの先にある。議事録から「次にやるべきこと」を自動で抽出する機能だ。

tl;dvのタスク抽出

tl;dvでは、会議終了後にAIが自動で以下の情報を整理してくれる。

  • 会議の要約(3〜5文程度)
  • 決定事項の一覧
  • アクションアイテム(誰が、何を、いつまでに)
  • 質問や未解決の論点

ChatGPTやClaudeとの併用

AIツール単体のタスク抽出が物足りない場合は、文字起こしテキストをChatGPTやClaudeに渡して、より詳細な整理をさせる方法もある。

以下はクライアントとの打ち合わせの文字起こしです。
以下の形式で整理してください。

1. 決定事項(箇条書き)
2. 次回までのタスク(担当者と期限付き)
3. 保留になった事項
4. クライアントの懸念点(ニュアンスを含めて)

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(文字起こしテキストを貼り付け)

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AI議事録ツールとChatGPT/Claudeの組み合わせについては、ChatGPT・Claude活用パターン10選でも詳しく扱っている。

プライバシーに関する注意点

AI議事録ツールを使う際に、最も気をつけるべきはプライバシーの問題だ。

会議参加者への事前通知

AI議事録ボットが会議に参加すると、参加者に「録音されている」ことが通知される。しかし、事前の説明なしにいきなりボットを入れると、相手に不信感を与えることがある。

会議の冒頭で「議事録作成のためにAIツールを使っている」と一言伝えるのがマナーだ。クライアントによっては録音自体をNGとするケースもあるため、事前確認は必須だ。

録音データの保存先

各ツールの録音データがどこに保存されるか、AIの学習に利用されるかは確認しておく必要がある。

ツール データ保存 AI学習への利用
tl;dv クラウド(3ヶ月で削除・無料) 要確認
Otter クラウド 設定で制限可能
Notta クラウド 非利用(公式)
CLOVA Note クラウド 要確認

機密情報の取り扱い

NDA(秘密保持契約)が締結されている案件の会議では、AI議事録ツールの利用がNDA違反にならないか事前に確認する必要がある。契約書に「第三者への情報開示禁止」が含まれている場合、クラウド上にデータを送信すること自体が問題になる可能性がある。

こうした契約関連の確認については、電子契約サービスの選び方も参考になる。

一人で仕事をしている場合の使い方

「会議の議事録」と聞くと、チームでの仕事を想像するかもしれない。しかし、一人で仕事をしている場合でも、AI議事録ツールには使い道がある。

クライアントとの1対1ミーティング

一人で事業をしていると、クライアントとの打ち合わせ内容を自分一人で覚えておく必要がある。AI議事録があれば、「あのとき何を決めたか」を正確に振り返れる。言った言わないのトラブル防止にもなる。

自分の思考整理

一人でブレインストーミングするとき、音声で考えを話しながら録音し、AI議事録ツールで文字起こしするという使い方もある。キーボードで打つより、声に出す方が思考が速い人には有効な方法だ。

セミナーや勉強会の記録

参加したオンラインセミナーの内容をAIに記録させておけば、後から検索可能な形でナレッジを蓄積できる。自分だけのナレッジベース構築に役立つ。

こうしたナレッジ管理の自動化は、ノーコード自動化ガイドAI × SaaS連携で紹介した手法と組み合わせるとさらに効果が高い。

導入コストと時間削減の目安

項目 導入前 導入後
1回の議事録作成 30〜60分 5〜10分(確認・修正のみ)
月4回の会議の場合 月2〜4時間 月20〜40分
年間の節約時間 -- 約20〜40時間
ツール費用 0円 0円〜月$18程度

無料プランでも実用的に使えるツールが複数あるため、コストゼロで始められるのは大きい。有料プランに移行するかどうかは、2週間ほど無料で試してから判断すればいい。

よくある質問

Q. 文字起こしの精度はどの程度か?

静かな環境で一人ずつ話す場合、日本語でも95%以上の精度が出る。ただし、複数人が同時に話す場面、専門用語が多い業界、騒がしい環境では精度が落ちる。Nottaなどは単語登録(専門用語辞書)機能で精度を補える。

Q. スマートフォンからも使えるか?

tl;dv、Notta、CLOVA Noteはスマートフォンアプリに対応している。特にCLOVA Noteは対面の録音に向いており、スマホで録音してそのまま文字起こしできる。

Q. 録音データの容量が心配だが?

各ツールともクラウド保存のため、端末のストレージは消費しない。ただし、無料プランでは保存容量や保存期間に制限があるため、重要な会議の記録はテキストでエクスポートしておくことを推奨する。

Q. 会議相手がAI議事録を嫌がる場合はどうするか?

まず、「録音して文字起こしするだけで、AIの学習には使われない」と説明する。それでも難色を示された場合は、その会議ではツールを使わないのが賢明だ。信頼関係を壊してまで効率化する意味はない。録音NGの場合は、会議後にメモをChatGPTやClaudeに整理させる方法で代替できる。

ここまでの整理

AI議事録ツールは「完璧な議事録を自動生成する魔法のツール」ではない。だが、「議事録の下書きを5分で作ってくれるアシスタント」としては、十分に実用レベルにある。

まずは次のクライアントとの打ち合わせで、tl;dvかNottaの無料プランを試してみてほしい。30分かけて議事録を書いていた時間が、5分の確認作業に変わる体験は、一度知ると戻れなくなる。